有機栽培のメリットとは?

有機栽培と有機質肥料

有機質肥料を利用した有機栽培をもう一度見なおしてみましょう。

堆肥やボカシといった有機質肥料の違いや目的をご説明しながら、有機栽培に有機質肥料を使う理由やそのメリットをご説明致します。

化学肥料と有機質肥料

肥料としてのあり方が無機物なものを化学肥料、有機物であるものを有機質肥料と呼びます。

有機質肥料を使ったとしても、有機質は微生物に分解され無機質になってから作物に吸収されています。植物が吸収する際はいずれも無機質の状態なのです。

少し難しくなりますが、チッソ肥料を例にとって見てみます。チッソ分はアンモニア態窒素という形で土中に投入されます。これが土の中の硝酸化成菌に分解され、硝酸態窒素となり植物に吸収されます。鶏糞堆肥なども、チッソ成分は堆肥中のアンモニア態窒素が硝酸態窒素になってから吸収されています。

つまり有機物であろうが無機物であろうが、植物は硝酸態窒素を吸収しているということです。植物は吸収後、アンモニア態窒素、アミノ酸、タンパク質と植物体内で作り変え、自分の体を作っています。

有機質肥料と化学肥料のイメージ画像

堆肥を使った場合、堆肥は堆肥内の雑菌や雑草のタネを殺すために70度以上の光熱で発酵されている事が多くアンモニア発酵をしています。
堆肥内の窒素成分はアンモニア態窒素に変わっていますから、土に投入される際には、窒素成分だけ見ると化学肥料の硫安を与えるのとほとんど変わりはありません。
アンモニア態窒素はその後硝酸態窒素になって植物に吸収されるという工程は同じなのです。

実際には堆肥には粗大有機物などの腐植の素になるものが含まれているので化学肥料と同じではありませんが、チッソ分だけ見ると同じです。
そして過剰な硝酸態窒素は虫を呼び、環境汚染の原因ともなります。

堆肥の中の窒素分がどのように変わっていくのか見てみましょう。

堆肥の有機物は微生物の働き「発酵」により、タンパク質からアミノ酸へと変わります。それがアンモニアになった時点で土中に投入され、その後硝酸態窒素になって植物に吸収されるというのが肥料の吸収の流れです。

植物は硝酸態窒素を吸った後、逆の工程をたどって自らの体を作るタンパク質を作ります。
もしもこれをアミノ酸という形で植物に吸収させることができたらどうでしょう?
植物は体内でアミノ酸をタンパク質に変えるだけですみます。

このことで工程がふたつ省けるため、植物は作業の短縮分の体力を他のことに使えます。
それは光合成により生成したもの「糖分」を無駄に使うことがないということです。つまり、作物の味が良くなるのです。

堆肥とボカシは何が違うの?

堆肥とボカシ肥はなにが違うの?と聞かれることがあります。

堆肥の役割は、肥料分の供給というよりどちらかというと土壌改良材、つまり粗大有機物の供給という意味が多く、面積当たりの投入量も多いものです。

有機栽培=堆肥と思われがちですが、肥料分として、堆肥は非効率な肥料と言ってもいいかもしれません。

家畜糞の堆肥は地域に畜産農家がいる場合入手しやすく、また廃棄物の問題もありますから、資源の有効活用という点では積極的に使いたい肥料の一つです。

しかし堆肥には欠点もあるのです。
堆肥の成分分析はきちんとなされていない場合が多いため、過剰な施肥になったり、また、すでにアンモニア発酵をしてしまって肥料分がほとんど空気中に飛んでいる可能性や、同じ堆肥を長年入れ続けることによる特定の成分の蓄積が土壌バランスを崩してしまうなどの問題があります。

堆肥は肥料として使用するには少し難しいものでもあるのです。

これに対してボカシは、米ぬかや魚粉など肥効の高いものを原料に、低温で発酵させて作ります。粗大有機物は含まれていないため、土壌改良ではなく純粋に肥料として使われます。畑に全面に施肥するのではなく、畝のみであったり、根が伸びてくる位置に置く待ち肥であったりと効率よく使われます。

わかりやすく言うと、堆肥は「土壌改良目的で投入するもの」、ボカシは「肥料として投入するもの」といえるでしょう。

ボカシのイメージ画像

自分で堆肥を作るとなると原料の収集から堆肥場の建設、切り返しのための重機など大変な作業量が必要で、そうまでしてもいい堆肥を作るのは難しいと言われています。
ボカシはその点ハウスや作業場などの少ない面積で移植ごてさえあれば作ることができるため、有機農家の間でも、ボカシ肥を利用する農家が増えています。

上手に発酵させたボカシを使うと、苦味やえぐみのないおいしい野菜ができることがわかっています。これは初年度からその違いが実感できます。

もちろん長年堆肥を投入して微生物や腐植分が相当豊かになっている畑でもおいしい野菜はできますから、おそらくこれは、土中の微生物の働きが関係しているのだろうと考えられます。

「微生物が豊かな畑で生まれる野菜はおいしい」
と言ってもいいでしょう。

またボカシ肥は発酵中に微生物の働きにより、植物ホルモンが生成されることもわかっています。

植物ホルモンは植物が体内でつくっているものですが、外部から供給されることにより、植物の成長がより早く健全になり、成長が早まるなどのメリットがあると考えられています。

有機質肥料を使う理由

有機質肥料のメリットは、チッソ分をアミノ酸で与えられることにあります。

有機質肥料は植物に対して非常にいい状態、アミノ酸という形でチッソ分を吸収させることができます。その結果食味の良いものができることがわかっています。合わせて、供給される粗大有機物が畑の微生物叢を豊かにし、微生物の働きにより土中に固定されていた肥料分が溶け出す、植物ホルモンが生成されるなどのメリットがあるのです。

有機質肥料のイメージ画像

有機栽培の野菜がおいしい事が多いのは、このような微生物の働きによるものとも考えられます。1立方cmのなかに1億いると言われる微生物の働きは、まだきちんとわかってはいません。
しかし目に見えないこれらのものが作物と共生したり、土壌病害の原因となる菌の抑制をしたりすることにより、作物が健康に育つとも考えられています。

有機農業の基本は土づくりと言われますが、ただ堆肥を入れるだけではなく、堆肥を入れることによって生まれる様々なものが実は大切なのです。

そして、微生物が豊かになった畑では、自然栽培をすることも容易です。
わたしの知っている何軒かの農家では、肥料分を供給しないでも作物がうまくできると言います。

土壌分析診断をして窒素成分がほとんど存在しなくても、きちんと作物ができています。分析しても数値として出てこない状態の肥料分が、ちゃんと畑にあるということです。微生物とともに存在していたり、アミノ酸として土中にあれば、数値化はされません。
しかし豊かな土なのです。

このことがわかれば、土壌消毒剤や農薬の弊害がよくわかります。粗大有機物を供給することのない、化学肥料のみの栽培もいい結果を生まないことがわかります。野菜は土の中の見えない様々なものの助けを借りて生育しています。

有機栽培のメリットは、それらのものを利用して化学物質を使わず、健全な野菜が栽培できるということなのです。

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